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交通事故による死亡事故と時間帯の法則とは?

2018年12月号
交通死亡事故の法則の画像

夕暮れ時になると、歩行者は消えてしまう!?

死亡者が出るような交通事故は、どの時間帯で発生しているのでしょうか。警察庁がまとめた2013~2017年の5年間における交通死亡事故発生状況によると、17時台は1,300件を超え、18時台や19時台も1,200件以上と多いのに比べ、その他の時間帯はいずれも1,000件未満にとどまっています。そして、昼間の交通死亡事故では「自動車×自動車」の割合は21%で、「自動車×歩行者」の20%と同程度ですが、17時台~19時台では「自動車×自動車」の割合は11%に減り、逆に「自動車×歩行者」は53%と大きく増加していました。つまり、日没時刻の前後1時間の「薄暮」と呼ばれる時間帯に、歩行者を巻き込む交通死亡事故が多発しているのです。死亡した歩行者の特徴としては高齢者が多いこと、横断歩道以外での道路の横断で死亡事故が多いことも示されています。
太陽が地平線に没していき、薄い闇が広がる夕暮れ時は「黄昏時(たそがれどき)」とも呼ばれます。薄暗くなった夕方は人の顔が見分けにくく、「誰だあれは」という意味で「誰そ彼(たそかれ)」と言ったことから、「たそかれ(たそがれ)」は夕暮れ時を指す言葉となったそうです。
薄暗いから歩行者が見えづらくなり、交通死亡事故が発生しやすくなるのだろう、ということは感覚的にわかりますが、このときドライバーの視覚には、どのようなことが起きているのでしょうか。
夕方になると、ドライバーの瞳孔は光を取り込もうとして大きく開きます。そうなると、光を取り込む量は増えますが、眼の奥の網膜に映る像がぼやけてしまうという現象がまず起こります。これに加えて、薄暮時は、街並みと人の輪郭(コントラスト=明暗の差)がはっきりしていないと、人を人として認識できなくなってしまうようです。北里大学医療衛生学部視覚機能療法学准教授の川守田拓志氏らの研究1)によれば、環境と物体のコントラストが高い場合、明るい時の視力が1.1であれば、薄暮時でも0.9と視力は比較的保たれます。しかし、コントラストが低い場合、明るい時でも視力は0.7と落ち、さらに薄暮時では0.3と極端に見えにくくなることが明らかになっています。つまり、街並みが灰色で、歩行者も灰色の服を着ているような場合、薄暮時では歩行者は風景に溶け込んで“消えてしまう”というわけです。
薄暮時の交通死亡事故を防ぐために、ドライバーは早めに前照灯をつけること、歩行者は服や靴、カバン、杖などに反射材やライトをつけることがすすめられます。また、衣服の色にも注意を払うとよいかもしれません。薄暗い場所では青色に近いものが明るく見え、赤色のものが暗く見えることが知られており、「プルキンエ現象」と呼ばれています。このことから、夕方に買い物に出かけるような場合は、水色や青色の服を着用すると、ドライバーが気づく確率が高まると考えられます。

  1. 川守田拓志, ほか: 視覚の科学 2005; 3: 71-75

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