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マジカルナンバーの法則

2017年9月号
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人間が瞬間的に覚えられる情報量は「7±2」? 「4±1」?

人間は、瞬間的にどれくらいの情報量を記憶できるのでしょうか? この短期記憶の限界について研究し、1956年に論文1)を発表したのが米国の認知心理学者ジョージ・A・ミラーです。
ミラーは実験結果に基づき、人間が短期的に記憶できる情報の最大数は「7±2」、つまり5~9の範囲内であると結論づけました。ミラーが論文タイトルを「The Magical Number Seven, Plus or Minus Two」としたことから、「7±2」はマジカルナンバーとして、一般に広く知られるようになりました。
ただし、ミラーは「A」「B」「1」「2」など1つひとつの文字だけを情報の最小単位としたわけではありません。彼は情報を“まとまり”として記憶できるとし、この“まとまり”をチャンクと名づけました。例えば、「CATFOOD」をアルファベット7文字で記憶すると7チャンク、「CAT」と「FOOD」として記憶すると2チャンク、「CATFOOD」として記憶すると1チャンクです。「アジ、フグ、ハゼ、モズ、カラス」という5つの単語を「アジ・フグ・ハゼ」と「モズ・カラス」というふうに魚類と鳥類で分けると2チャンクにまとめられます。このように、情報をグループ化し、より大きな1つのチャンクにまとめることをチャンキングと呼びます。この手法を用いれば、記憶する情報量を増やすことができるとミラーは考えました。ですから、彼が提唱したマジカルナンバーを正確にいうと、「7±2チャンク」ということになります。
この“定説”は長らく信じられてきましたが、2001年に米国の心理学者ネルソン・コーワンが、「人間は瞬間的に7±2チャンクも覚えられない」とする論文2)を発表しました。コーワンが検証して打ち出したマジカルナンバーは「4±1」。つまり、短期記憶の限界数は3~5チャンクとされています。確かに、チャンキングの有無にかかわらず、「7±2チャンク」も覚えられるのか、と疑問を感じる人もいたのではないでしょうか?
短歌と俳句を例に考えてみましょう。「ゆく秋(あき)の大和
(やまと)の国(くに)の薬師寺(やくしじ)の塔(とう)の上(うえ)なる一(ひと)ひらの雲(くも)(佐々木信綱)」という短歌は、単語(秋、大和〔国〕、薬師寺、塔、雲)だけ覚えるにしても、また短歌全体で覚えるにしても、1回聞いただけでは難しいように思えます。一方、「沈黙(ちんもく)も言葉(ことば)のひとつ青(あお)りんご(又吉涼女)」ではどうでしょう。これなら何とか覚えられそうです。
現在では、マジカルナンバーを「4±1」とする説が有力となっています。他人に「この場でぜひとも覚えてもらいたい」という情報を提供する場合、3つか4つ程度にチャンキングすることがコツだといえそうです。

参考文献
  1. Miller GA. Psychol Rev. 1956; 63(2): 81-97
  2. Cowan N. Behav Brain Sci. 2001; 24(1): 87-114

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