薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 知識  〉 Medical Diagram  〉 ビタミンCの法則
check
薬剤師がおさえておきたい注目の記事
ハイリスク薬加算の薬歴の書き方は?服薬指導例についても解説
Medical Diagram

ビタミンCの法則

2017年2月号
ビタミンCの法則の画像

酸味のない食品にもビタミンCは多く含まれる

ヒトや直鼻猿亜目(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルなど)とその他の哺乳類の一部は、進化の過程でビタミンC(アスコルビン酸)の合成能を失っています。この能力を失った原因については、いまだ明らかになっていませんが、アスコルビン酸の低下がウイルスの増殖抑制に働いたとする説や、アスコルビン酸は野菜、果物に多く含まれているため、アスコルビン酸合成能を失っても生存に不利にならず、合成能を失った個体が偶然に集団内に広まったとする説などが示されています1)
ヒトにとってビタミンC摂取が重要な意味を持つようになったのは、16~18世紀の大航海時代でした。ビタミンCは活性酸素の消去という重要な働きを持っていますが、皮膚や血管、じん帯、骨、軟骨を作っているコラーゲンの合成にも深く関わっています。そのため、ビタミンCが欠乏すると血管がもろくなって出血する壊血病にかかりやすくなります。長い航海では食糧も限られますので、この病気にかかって死亡する船乗りが多かったわけです。
このようにビタミンCは大切な役割を果たしていますが、どうすれば効率よく摂取できるのでしょうか。ビタミンCといえば、すぐに酸味の強いレモンなどが思い浮かびますが、これは酸味=ビタミンCという思い込みで、酸味のない食品にもビタミンCは多く含まれています。
ビタミンC摂取でおすすめの主な食品を表に示します。意外なところでは、魚介類ではめんたいこ、海藻類ではのりにビタミンCが多く含まれています。イモ類ではジャガイモやサツマイモのビタミンC含有量が多く、しかも一度に食べることができる量が多いので、ビタミンCのよい供給源といえます。
野菜で摂る場合、ビタミンCは水溶性で熱に弱いという特性を考慮する必要があります。加熱の場合、オーブン、蒸す、茹でる、電子レンジの4種の加熱操作の違いにより、カットしたジャガイモのビタミンCの含有量がどのように変化するかを検討した報告では、加熱調理後の総ビタミンCの残存率は電子レンジ(加熱時間45秒)が最も高く、次いで蒸す、オーブンが高く、茹でるが最も低いという結果でした2)(上図)。電子レンジを上手に活用すれば、栄養素を比較的壊さずに摂取できるといえるでしょう。

  1. 井村裕夫, 進化医学, 2013, 羊土社
  2. 大羽和子, 日本家政学会誌 1988; Vol.39 No.10, 1051-1057
表 ビタミンC含有量の多い主な食品(100gあたりのビタミンC含有量)
果実類 アセロラ酸味種(生) 1700mg
アセロラ甘味種(生) 800mg
キウイフルーツ黄肉種(生) 140mg
レモン(全果、生) 100mg
ジュース アセロラジュース・10%果汁 120mg
野菜類 トマピー(生) 200mg
赤ピーマン(油いため) 180mg
黄ピーマン(油いため) 160mg
芽キャベツ(生) 160mg
イモ類 ジャガイモ(皮むき、フライドポテト) 40mg
ジャガイモ(皮むき、水煮) 21mg
サツマイモ(皮むき、蒸し) 29mg
魚介類 めんたいこ 70mg
藻類 焼きのり 210mg
味付けのり 200mg

文部科学省:食品成分データベースより

この記事の関連キーワード

この記事の冊子

特集

虚血性心疾患~虚血が起こる時から心筋梗塞まで~

2015年の死因別死亡総数のうち、心疾患(高血圧性を除く)は19万6,113人で、死因別死亡数全体の15.2%を占め、最多の悪性新生物(がん)に次いで2番目に多い数字でした。国を挙げて予防に取り組んでも事態はあまり変わっていません。

虚血性心疾患~虚血が起こる時から心筋梗塞まで~の画像
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

【胃がん】化学療法は腫瘍縮小・病状の安定に寄与

近年、トラスツズマブなど分子標的薬の登場により、切除不能進行・再発胃がんに対する化学療法が進歩し、高い腫瘍縮小効果を期待できるようになったが、術後補助化学療法施行例を別とすれば、化学療法対象症例の多くは緩和療法に移行する。

【胃がん】化学療法は腫瘍縮小・病状の安定に寄与の画像
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

【胃がん】副作用をマネジメントし、患者のQOLを高める薬剤師は“最後の砦”

国立がん研究センター がん対策情報センターによると、2016年の胃がんの罹患数予測は大腸がんに次いで2位(133,900人)、死亡数予測は肺がん、大腸がんに次いで3位(48,500人)である。国立がん研究センター東病院薬剤部の野村久祥氏に、近年、増加傾向にある外来化学療法における薬剤師の役割などについてお聞きした。

【胃がん】副作用をマネジメントし、患者のQOLを高めるの画像
ここに注目!知っているようで知らない疾患のガイセツ

髄膜炎

髄膜炎はさまざまな原因で起こりますが、一般的には感染症による髄膜炎のことをいいます。なかでも問題になるのは細菌が原因の細菌性髄膜炎です。小児に多く、時に死に至ったり、重篤な後遺症を残したりします。

髄膜炎の画像
Medical Diagram

ビタミンCの法則

ヒトにとってビタミンC摂取が重要な意味を持つようになったのは、16~18世紀の大航海時代でした。ビタミンCは活性酸素の消去という重要な働きを持っていますが、皮膚や血管、じん帯、骨、軟骨を作っているコラーゲンの合成にも深く関わっています。

ビタミンCの法則の画像
薬剤師の栄養サポート

がん治療中の栄養指導

外来で放射線治療や抗がん剤治療を受ける患者さんが増えています。治療中は、病気による症状(倦怠感、痛みなど)に加え、治療による副作用で、どうしても食欲がなくなってしまうことがあります。がんと闘う体力や免疫力を維持するためにも、食べられるものを食べられるときに摂るというのが、がん治療中の栄養指導の原則です。

がん治療中の栄養指導の画像
Special Report

「地域包括ケア病棟」の最前線 多職種と連携し在宅復帰を支援

地域包括ケアシステムを構築するため厚生労働省が打ち出した病院再編構想の1つ、「地域包括ケア病棟」の整備が全国で進んでいる。(株)日本アルトマーク主催のシンポジウムが開催され、地域包括ケア病棟の課題や将来展望についての講演や、地域包括ケアシステムの構築に向け実臨床から得られるデータ活用の有用性などについて解説があった。

「地域包括ケア病棟」の最前線 多職種と連携し在宅復帰を支援の画像
英語で服薬指導

英語で服薬指導 「いつから下痢をしていますか?」

外国の患者さんが来局した際に知っておきたい基本的な会話を紹介する本シリーズ。今回はOTC薬(下痢止め)について。「いつから下痢をしていますか?」これを英語で言うと!?

英語で服薬指導 「いつから下痢をしていますか?」の画像

この記事の関連記事

人気記事ランキング