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薬剤師の栄養サポート

健康食品との上手な付き合い方

2017年6月号
健康食品との上手な付き合い方の画像
 近年、健康食品の利用者は増加しており、平成27年4月には機能性表示食品制度が始まり、健康食品への期待は益々高まっています。それに伴い、病気の人が健康食品を利用する機会も増えており、薬剤師の皆さんの中には、患者さんから健康食品について質問されたことのある人も多いと思われます。しかしながら、このように主治医や薬剤師に相談してくれる患者さんはごく一部なのです。患者さんが主治医や薬剤師に相談せずに利用することで、思わぬ健康被害が生じる危険性もあることから、本稿では、薬剤師としての健康食品との上手な付き合い方について解説します。

医薬品と健康食品との違い

医薬品と健康食品(図1)の違いはいくつかありますが、最も重要な違いは品質です。医薬品は流通している全ての製品がGMP(Good Manufacturing Practice)に準じて製造されていますが、健康食品は錠剤・カプセル状の製品であっても、その品質はまちまちで、場合によっては表示されている成分が含有されていない製品さえあります。また、悪質なものでは医薬品成分を違法に添加した製品もあります。そのような粗悪な製品はインターネットなどで流通しているものが多いため、信頼できるメーカーの製品や正規の流通経路で販売されているもの以外について、患者さんから相談を受けた場合は、利用しないようにアドバイスしましょう。

図1 健康食品とは

健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義はなく、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです。
そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした「保健機能食品制度」があります。

図1 三叉神経の名称の画像

厚生労働省ホームページを参考に作成

また、「健康食品で病気が治った」といった宣伝広告をよく目にしますが、健康食品は病気の治療を目的につくられたものではありません。あくまで食品であり、医薬品のような治療効果はありませんので、病気の治療目的に利用している患者さんには、そのことをきちんと伝えましょう。

健康食品による健康被害

医薬品(合成品)と違い、健康食品は天然、自然由来の成分でつくられているから安全だと信じている消費者は多く、また患者さんにおいても、「食品だから」と医師、薬剤師に健康食品の利用を伝えない方も多くいます。このような状況において、健康食品の利用が原因と思われる体調不良を経験している人が一定の割合で報告されています(図2)。先に述べた粗悪な製品を用いた場合、重篤な被害につながりますが、日本においてその頻度は決して高くはありません。しかしながら、きちんとした製品を利用しているにもかかわらず、利用者の体質や誤った使い方が原因で体調不良を感じている人がいます。

図2 健康食品による健康被害報告
「いわゆる健康食品」の健康被害情報
  16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
報告件数 38 39 15 30 26 23 16 20 10
製品数 41 58 17 42 33 40 19 25 12
肝機能障害 11 13 2 10 11 8 7 5 1
発疹等皮膚症状 6 11 3 4 2 5 6 8 7
消化器症状
(下痢、腹痛、嘔吐等)
11 9 7 9 10 10 1 6 5

(注:24年度は10月末までのデータ)

厚生労働省には、保健所を介して年間20件程度の報告が上がっている。ただし、国民生活センターには年間数百件の健康被害相談が寄せられている。

厚生労働省ホームページおよび平成26年度厚生労働科学研究「いわゆる健康食品による健康被害情報の因果関係解析法と報告手法に関する調査研究」を参考に作成

患者さんから健康食品が原因と思われる体調不良を相談された場合、下痢やアレルギー症状であれば、大抵は摂取をやめることで改善しますので、摂取をやめるように指導してください。ステロイドホルモンによる副作用が疑われる場合は、摂取をやめさせると離脱症状を引き起こしてしまいますので、摂取をやめさせずに、すぐに医療機関を受診するように伝えてください。また、可能であれば保健所に連絡してください。些細な情報であっても、同様の報告が上がってくることで被害の拡大防止につながります。

医薬品と健康食品の相互作用

患者さんによる健康食品の利用で最も注意しなければならないのは、医薬品との相互作用です。現在、相互作用を起こす危険性がある健康食品素材として厚生労働省から注意喚起されているものはセント・ジョーンズ・ワート(西洋オトギリソウ)だけです。しかしながら、それ以外にも医薬品と相互作用を起こす可能性のある素材は数多く存在します。その一方で、

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