
Part.2 心不全患者の服薬指導はきめ細かく 併存疾患・基礎疾患の治療薬との相互作用に注意
処方薬が多い心不全患者 相互作用に注意する
合併症・基礎疾患をもつ心不全患者は併用薬剤が多い。心筋梗塞由来の心不全なら抗血小板薬が必要であり、糖尿病の合併があれば糖尿病治療薬が処方される。そこに利尿薬、心不全治療薬が加わるため5剤〜6剤の多剤薬剤管理は珍しくない。生命予後の改善に有効性が証明されているACE阻害薬、ARB、β遮断薬は心不全治療の中心的薬剤だが、これらの薬剤と併存疾患・基礎疾患のために用いられる薬剤の相互作用に注意する必要がある。
たとえばACE阻害薬、ARBは相互作用として高カリウム血症を惹起することが知られており、カリウム補充薬やカリウム保持性利尿薬との併用には注意が必要である。心不全の治療に用いられるスピロノラクトン、2016年に慢性心不全の適応が追加されたエプレレノンはカリウム保持性利尿薬であり、腎機能低下症例では高カリウム血症に留意が必要である。榊原記念病院薬剤科副主任の井亀寛子氏は「入院中の患者さんでも昨日はよかったのに今日は血清カリウム値が危険値に上昇していたという例がみられます。そのような場合は、ACE阻害薬、ARB、カリウム保持性利尿薬の一時休薬や投与量について疑義照会します」と言う。このほか、抗不整脈薬や抗凝固薬では相互作用をきたす薬剤が多いので、処方されている場合は他の薬剤とのチェックが大切だ。
心不全の治療は、医師、看護師だけでなく薬剤師や栄養士などが加わった多職種との情報共有によるチーム医療が重要となる。榊原記念病院では看護師が心不全治療への理解を深めてもらう目的で入院患者に対して講義を行い、栄養士は食事指導を担当する。病棟薬剤師も服薬指導だけでなく生活面での指導を行うが、保険薬局の薬剤師もチーム医療の一員として患者情報を共有することが必要だ。
では、保険薬局の薬剤師は主治医にどのような情報を提供できるだろうか。 第…