ここに注目!知っているようで知らない疾患のガイセツ

知っているようで知らない 疾患のガイセツ 筋ジストロフィー

2018年6月号
筋ジストロフィーの画像
指定難病の1つで、根本的な治療法がない遺伝子性の病気として知られている筋ジストロフィー。しかし、近年はエクソンスキップという遺伝子治療に基づく新薬の開発や患者さんのiPS細胞を用いた遺伝子修復の研究などにより、延命から根本的な治療の時代へと大きく転換しつつあります。今回は独立行政法人国立病院機構箱根病院の名誉院長であり、一般社団法人日本筋ジストロフィー協会専属医師である石原傳幸氏に、患者数が最も多く代表的なデュシェンヌ型を中心とした筋ジストロフィーと最新の治療動向について解説していただきました。

筋ジストロフィーとは

筋肉が衰えていく筋萎縮性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など神経が障害を受けることによる神経原性疾患と、筋肉そのものに原因がある筋原性疾患に大別できます。さらに筋原性疾患の中でも遺伝子性と進行性という2つの特徴を持つ病気の総称が筋ジストロフィーです。
一般には筋ジストロフィーという総称が広く認知されていますが、実は多くのタイプがあります。遺伝形式によって分類され、なかでも患者数が最も多く、代表的な筋ジストロフィーとしてよく知られているのがデュシェンヌ型です。デュシェンヌ型と同じ遺伝子の異常ですが、それより症状が軽いものをベッカー型といいます。そのほかに肢帯型、先天性、顔面肩甲上腕型、筋強直性などがあり、症状はそれぞれ異なります。
デュシェンヌ型の国内の患者数は約3,000人で、減少傾向にあります(2018年3月時点)。その背景には少子化や出生前診断などの影響があると考えられます。デュシェンヌ型についていえば、患者さんの平均余命は延び、かつては16歳くらいで亡くなる事例が多かったのが、現在は33歳にまで延びました。私が診ている患者さんの中には50歳代の患者さんもいます。

たんぱく質合成に関わる遺伝子と筋肉の関係

私たちは筋肉を動かして日常動作を行っています。筋肉を束ねてしっかりと動かす役割を果たしているのが、筋細胞の膜の内側に存在している「ジストロフィン」というたんぱく質です。遺伝子の配列においてたんぱく質合成の遺伝情報を持つ部分を「エクソン」といいます。ジストロフィン遺伝子には79個のエクソンがあり、列車のようにつながっています。ところが、一部のエクソンが欠ける「欠失」や、逆に余分にある「重複」などの遺伝子異常が起こると、たんぱく質合成ができなくなります。その結果、ジストロフィンたんぱく質を作れなくなるため、筋肉が衰えていくわけです。
筋肉というと手足を動かすことを思い浮かべがちですが、心臓の働きも呼吸の際に動く横隔膜も、噛む、飲み込むといった動作を支えているのも筋肉です。つまり、筋肉が衰えるということは、四肢だけではなく、内臓を含めた全ての筋肉が衰えていくということです。それゆえに進行すると最終的には生命の危機に直結します。
なお、デュシェンヌ型はX染色体にある遺伝子の異常によって起こる伴性劣性遺伝(性染色体劣性遺伝)により、母親から男子に遺伝して発症することがわかっています。ただし、症例の3分の1は遺伝子の突然変異で発症します。

受診のきっかけと確定診断

デュシェンヌ型は主に3〜4歳で発症しますが、「歩き方が不自然」と幼稚園で指摘されたり、「走らない」、「階段の上り方がおかしい(上れない)」、「ソファーから飛び降りない」など親が子どもの様子に気づいて受診に至る例が多いです。
最初は小児科などを受診するかもしれませんが、筋ジストロフィーの疑いがあれば血液検査ですぐにわかります。その指標がクレアチンキナーゼ(CK)で、男子の場合、200IU/Lまでが正常値ですが、20,000IU/L程度の極めて高い数値が検出されるからです。CKは筋細胞に多く含まれ、通常は血液中には出てきません。高い数値で検出されるということは筋細胞が壊れていることを示しています。
確定診断には専門医の受…

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