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ハイリスク薬加算の薬歴の書き方は?服薬指導例についても解説
特集

妊婦・授乳婦へ薬剤が与える影響とは?

2018年12月号
妊婦・授乳期の質問にこたえるの画像

多くの添付文書には「妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」、あるいは「治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること」と記載されていますが、実際には処方されている薬剤もあり、判断に迷うケースは少なくありません。国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センター長の村島温子氏に妊婦・授乳婦に関する質問にこたえていただきました。

第1部 妊婦・授乳婦の薬の基礎知識

はじめに

妊婦や授乳婦から薬剤に関する質問を受けて困ったことのある薬剤師は多いのではないでしょうか。妊婦・授乳婦に対する薬剤の影響はエビデンスが乏しいため、医師でも迷うケースは少なくありません。
第1部では、まず、妊娠期の母親と胎児、授乳期の母親と乳児の身体がどのように変化し、薬剤がどのような影響を与えるかを解説します。妊婦に禁忌の薬剤は授乳婦にも禁忌だと誤解している人がいますが、妊婦と授乳婦で注意すべき薬剤は異なります。
第2部では、患者さんからよく尋ねられる質問を挙げ、エビデンスに基づいた回答をお示しします。精神科系の薬剤や抗がん剤など専門性の高い薬剤については、医師の判断にゆだねることが望ましいため、ここでは取りあげていません。もし患者さんから相談された場合には、かかりつけ医や専門医に相談するように勧めましょう。

妊娠期の母体の変化

妊娠すると母体にはさまざまな変化が生じます。妊娠の時期は週数で表し、その数え方は、月経周期が28日型の女性を基準に計算します(図1)。通常は最終月経開始日から14日目に排卵が起き、そこで受精が成立して妊娠に至ると、最終月経開始日から280日目、すなわち40週0日が分娩予定日となります。実際には周期は一定ではないため、妊娠10週前後の胎児の大きさを超音波断層法で測定して妊娠週数を確定します。

図1 妊娠の各時期と胎児への薬剤の影響
  第1三半期 妊娠初期(~13週) 第2三半期 妊娠中期(14~27週) 第3三半期 妊娠後期(28週~)  
妊娠週数 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43
妊娠月数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
呼称   胎芽 胎児
薬剤の
影響
all or none 催奇形性 胎児毒性

伊藤真也, 村島温子編. 薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 改訂2版. 南山堂. 2014 を参考に編集部作成

妊娠10週頃までに胎児のほとんどの臓器が形成されます。多くの人は予定月経が遅れて妊娠に気づきます。妊娠に気づいた頃には臓器の器官形成が盛んに行われている時期で、ちょうどこの頃に悪阻(おそ)が生じますが、大半は11~16週頃には消失します。下腹部の膨らみが目立ち始める16~18週頃には胎動を自覚するようになります。
母体の代謝にも変化が生じます。妊娠中は血漿浸透圧が低下傾向となります。妊娠後期には胎児、胎盤、羊水の水分に加え、循環血漿量の増加、子宮、乳房の増大により、非妊時と比べて約6.5Lもの水分貯留が起こります。
正常妊娠では空腹時の軽度の低血糖と食後の高脂血症、高インスリン血症が特徴です。インスリン抵抗性は増大します。
また、妊娠中は循環血液量の増加により、肝血流量、腎血流量ともに増加します。

妊娠期の薬剤が胎児に与える影響

妊娠中、胎児は胎盤を通して母体から酸素やそのほかの栄養素を吸収します。ほとんどの薬剤は胎盤を通過します(図2)。胎盤の通過に影響を与える因子には、たんぱく結合率、分子量、イオン化の程度、脂溶性の程度などがあります。また、妊娠期は肝臓や腎臓の機能にも変化が生じており、薬剤の胎児への移行にはさまざまな要因が影響します。

図2 妊娠期と授乳期の薬剤の移行
母親の薬剤摂取から児の血中までジゴキシンを例に(児体重5kgとして)

図2 妊娠期と授乳期の薬剤の移行 妊娠期の画像
図2 妊娠期と授乳期の薬剤の移行 授乳期の画像

村島氏の話をもとに編集部作成

胎児の臓器が作られる妊娠初期に問題となるのが催奇形性で、臓器が作られたあとに問題となるのが胎児毒性です。
最終月経から妊娠3週末の時期は、薬剤の影響は「all or none」といわれます。この時期に薬剤の影響を受けた場合、すべての細胞が死滅して着床しないか、完全に修復し、形態的な異常は生じません。
妊娠初期は胎児の中枢神経系、心臓、消化器などの重要な臓器が発生、分化する時期であり、薬剤の影響を最も受けやすく、服薬には注意が必要です。臓器によって損傷の受けやすさに差があります。この時期に注意すべき薬剤のうちメトトレキサートは、メトトレキサート胎芽病などの催奇形性のリスクがあるほか、絨毛組織の増殖を阻害して流産を起こす恐れがあります。ミソプロストールなどプロスタグランジン製剤はメビウス症候群などの催奇形性や、子宮収縮作用があり流産を起こす可能性があるため禁忌となっています。
妊娠中期・後期には、胎児の機能的異常や発育の抑制、子宮内の環境悪化、分娩直前の薬物による新生児薬物離脱症候群などが問題となります。
胎児毒性は子宮内環境、胎児の発育、機能、出生後の発育・発達に悪影響を与える可能性があることをいいます。胎児毒性を示す代表的な薬剤としては、抗炎症薬(NSAIDs)や降圧薬があります。NSAIDsは胎児のプロスタグランジン生成を阻害して、胎児の尿量低下をきたし、羊水過少や動脈管の早期収縮が報告されています。降圧薬のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は胎児の腎機能を障害し、羊水過少や頭蓋骨の異形成、胎児死亡が報告されています。

◆ 薬物動態

薬物のクリアランスは血流量、酵素発現量、たんぱく結合率が関与します。妊娠中の心拍出量は増加し、心拍出量の約25%を占める腎血流量も妊娠3カ月頃には30~50%増加します。血清尿素窒素(BUN)やクレアチニンの血中濃度が妊娠中に低下するのはこのためです。
薬物代謝酵素は成人ではCYP3A4とCYP2C群の発現量が多くなっていますが、妊娠中は、ほとんどの分子種が増加します。たとえばCYP2D6の代表的な基質薬物であるβ遮断薬のメトプロロールの経口クリアランスは妊娠中に2倍程度増加します1)。一方、CYP1A2とCYP2C19の活性は低下することが報告されています。分子種により変化が異なる要因は明らかになっていませんが、妊娠中の血清エストロゲンやプロゲステロンの増加が関係する可能性が示唆されています。

1)Högstedt S, Lindberg B, Peng DR, et al: Clin Pharmacol Ther 37: 688-692. 1985

薬剤が乳児に与える影響

薬剤の乳汁中への移行には、薬剤の分子量、たんぱく結合率、脂溶性、イオン化などの因子が影響を与えます。分子量が大きく、たんぱく結合率が高いほど母乳への移行量が少なくなります。脂溶性の薬剤は、脂質で構成されている細胞膜を通過しやすいため、母乳へ移行しやすくなります。
薬剤の母乳中濃度/母体血漿中濃度の比(M/P比)が大きい薬剤ほど母乳へ移行しやすいとされます。ほとんどの薬剤はM/P比は0〜1,2程度といわれています2)。ただし、M/P比は単に母乳中の薬剤濃度の指標であり、乳児が母乳を介して摂取する薬の総用量を計算すると実際にはきわめて少量であることがほとんどです。つまり、M/P比だけでは乳児の薬剤曝露を誤解して評価してしまう恐れがあります。このため、相対的乳児投与量(RID)が指標として使われます。

RID(%)= 母乳を介して児が摂取する用量(mg/kg/日) 母親の治療量(mg/kg/日) ×100

RIDは乳児の薬剤摂取量(体重当たり)が母体への薬剤投与量(体重当たり)の何%に相当するかを示したものです。たとえば、RIDが100%のときは、乳児が母乳を介して摂取する薬の量が、体重当たりの母親の治療量と同じであるということです。RIDが10%のときは体重当たりの母親の治療量の10%を乳児が摂取することになります。通常、RIDが10%以下であれば安全だとされています。
母親の薬剤摂取が乳児に与える影響は、薬剤の性質だけでなく、乳児の消化能や代謝能など母子がもつさまざまな因子が関連します。クリアランスの低下や代謝機能の未熟さのために乳児に蓄積しやすい薬剤がある一方、代謝されずに排泄される薬剤もあります。早産児や疾患をもつ児では影響を受けやすい可能性があるため、個別の状況を踏まえた判断が必要です。
表1に授乳中の使用には適さないと考えられる薬剤をまとめました。母乳中の薬剤が乳児に与える影響は、薬物動態のみならず、さまざまな因子が関連します。児の月齢や母乳の割合によっても児に与える影響は異なります。母乳育児には母児ともに多くのメリットがありますから、安易に授乳を中止するのではなく、希望に応じてできるだけ母乳育児を続けられるように専門的なサポートを行うことが大切です。

2)Merino G et al: Mol Pharmacol. 67: 1758-1764. 2005

表1 授乳中の使用には適さないと考えられる薬剤
成分名 代表的な商品名 代表的な薬効分類
アミオダロン アンカロン 抗不整脈薬
コカイン コカイン 麻薬
ヨウ化ナトリウム(123Ⅰ) ヨードカプセル-123 放射性ヨウ素
ヨウ化ナトリウム(131Ⅰ) ヨウ化ナトリウムカプセル 放射性ヨウ素

国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センターホームページより引用

第2部 妊婦・授乳婦の質問にこたえる

【妊娠期の質問】

Q1. 妊娠中に抗インフルエンザ薬は使用できますか?

妊婦がインフルエンザに感染すると重症化しやすく、気管支炎や肺炎などの合併の恐れもあります。抗インフルエンザ薬として主に使用されるのは、ノイラミニダーゼ阻害薬のザナミビル(製品名リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、オセルタミビル(タミフル)です。ノイラミニダーゼ阻害薬はA型・B型に有効性が期待できます。発症後36~48時間以内に速やかに使用する必要があるため、早めの受診を推奨しましょう。予防接種や手洗いなどによって予防することが大切です。

Check Point

妊婦がインフルエンザに罹患すると重症化しやすい 使用可能な抗インフルエンザ薬は、ザナミビル、ラニナミビル、オセルタミビル 発症後36~48時間以内の使用が望ましい

Q2. 腰痛で湿布薬を処方されました。胎児に影響はありませんか?

湿布薬などの外用剤は経皮吸収されて母体血中に移行し、さらに胎盤を介して胎児の血中に移行する量はごくわずかと考えられます。しかし、ケトプロフェンは血中濃度が上昇しやすく、妊娠後期に使用した事例で胎児動脈管収縮が報告されたため、2014年3月に「妊娠後期の女性には本剤を使用しないこと」という添付文書改訂が行われました。ケトプロフェンを含め、他のNSAIDs貼付剤の使用は通常量であれば胎児への影響は少ないと考えられますが、漫然と使用することは避けた方がよいでしょう。

Check Point

外用剤が経皮吸収されて胎盤に移行する量はごくわずかである NSAIDs貼付剤は漠然と使用しない

Q3. アトピー性皮膚炎でステロイド(外用剤)を使っています。妊娠中も使って大丈夫でしょうか?

ステロイド外用剤の添付文書には「妊娠又は妊娠している可能性のある婦人に対しては大量又は長期にわたる広範囲の使用は避けること」と記載されています。これは、動物実験で、妊娠初期に大量のステロイド外用剤を使用した場合に口蓋裂が出現したという報告があるためです。しかし、一般的な臨床使用量、使用方法であれば、全身循環への吸収量は少なく、妊娠自体や胎児への影響はありません。自己判断で中止すると症状を悪化させることがありますので、必ず医師に相談するよう指導しましょう。

Check Point

ステロイド外用剤は一般的な臨床使用量、使用方法であれば胎児に影響はない 自己判断で中止すると症状を悪化させることがある

Q4. 便秘がひどくて困っています。妊娠に気づかずにセンノシドを飲みました。大丈夫でしょうか?

妊娠期の便秘の大部分はプロゲステロンの変化や子宮増大による圧迫で大腸の動きが緩慢となることが原因で起こる機能性便秘とされています。食事・運動など生活指導を行っても改善されない場合には薬物療法の適応となります。薬物療法では一般的に第一選択薬は塩類下剤(酸化マグネシウム)です。それでも効果がみられない場合には大腸刺激性下剤(ピコスルファートナトリウム、センナ、センノシド、ビサコジル)を使用します。妊娠中の使用については添付文書では、ピコスルファートナトリウム、ビサコジルは有益性投与となっていますが、センナ、センノシドは動物実験で子宮収縮を起こしたため添付文書上は原則禁忌となっています。ヒトで流産のリスクが増加したとの報告はありませんので、必要以上に心配することはありません。

Check Point

妊娠中のセンナ、センノシドの使用で、ヒトでの流産を含め明らかな有害事象の報告はない

Q5. 花粉症で点鼻薬・点眼薬を処方されました。胎児に影響はありませんか?

花粉症に使用される点鼻薬・点眼薬は局所治療を目的に作られているため、全身への移行量はわずかで、胎児への影響はほとんどないと考えられます。
内服薬であっても、第一世代の抗ヒスタミン薬3)、第二世代のセチリジン、ロラタジンは妊娠中の使用に関する情報が集まってきています4)~6)。内服薬であっても使用が許容される薬剤もあるため、外用剤で症状が緩和されない場合は、医師・薬剤師に相談するように指導しましょう。

Check Point

点鼻薬・点眼薬は全身への移行量がごくわずかである 内服薬では抗ヒスタミン薬やセチリジン、ロラタジンは妊娠中の使用に関するデータが集積されてきている
  1. Schatz M, Petitti D: Ann Allergy Asthma Immunol 78(2): 157-159. 1997
  2. Källén B: J Matern Fetal Neonatal Med 11(3): 146-152. 2002
  3. Moretti ME, et al: J Allergy Clin Immunol 111(3): 479-483. 2003
  4. Centers for Disease Control and Prevention(CDC): MMWR Morb Mortal Wkly Rep 53(10): 219-221. 2004

【授乳期の質問】

Q1. 風邪をひきました。市販のかぜ薬を飲んでも大丈夫でしょうか?

まずは医療機関を受診して症状に合わせた薬を処方してもらうことが大切です。多くの一般用医薬品(以下、OTC)かぜ薬の添付文書には「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けてください」と記載されていますが、通常量を短期間使用する場合には授乳中の乳児への影響はないとされています。ただし、鎮咳作用のあるリン酸コデインが含まれるものは、母乳への移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告があるため注意が必要です。OTCの種類は多く、製品ごとに構成成分や比率が異なることから、各製品の構成成分を確かめたうえで指導することが必要です。OTCのかぜ薬の主な成分として、アセトアミノフェンやイブプロフェンがあります。どちらも乳汁中への移行はわずかであると報告されています。参考に授乳中に安全に使用できると考えられる解熱鎮痛薬(痛み止め・解熱剤)の例を表2に示しました。

表2 授乳中に安全に使用できると考えられる主な解熱鎮痛薬(痛み止め・解熱剤)
成分名 代表的な商品名
アセトアミノフェン カロナール
イブプロフェン ブルフェン
インドメタシン インテバン
ジクロフェナク ボルタレン
ロキソプロフェン ロキソニン

国立成育医療研究センター
妊娠と薬情報センターホームページを参考に作成

たとえば製品Aは、ジヒドロコデインリン酸塩が含まれるので、短期間の使用は問題ありませんが、注意が必要です。
【製品Aの成分】
添付文書の記載:授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けてください。

  • アセトアミノフェン(300mg)
  • グアイフェネシン(60mg)
  • dℓ-メチルエフェドリン塩酸塩(20mg)
  • ジヒドロコデインリン酸塩(8mg)
  • クロルフェニラミンマレイン酸塩(2.5mg)
  • 無水カフェイン(25mg)
  • リボフラビン(ビタミンB2)(4mg)

Check Point

リン酸コデインは、乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告があるため注意が必要 アセトアミノフェンやイブプロフェンは乳汁中への移行量が少ない 一般用医薬品のかぜ薬の構成成分や比率は製品ごとに異なるため個別に確認のうえ指導する

Q2. 授乳中でも飲める花粉症治療薬を教えてください。

授乳中に安全に使用できると考えられる抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)の例を表3に示しました。内服薬についても母乳に移行する量は少ないという報告があります。点鼻薬や点眼薬は母親の血中に移行する量が非常に少なく、したがって乳汁中に移行する量はごく少量であるため、乳児への影響はほとんどないと考えられます。

表3 授乳中に安全に使用できると考えられる抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)
成分名 代表的な商品名
ジフェンヒドラミン トラベルミン
デスロラタジン デザレックス
フェキソフェナジン アレグラ
ロラタジン クラリチン

国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センターホームページを参考に作成

Check Point

点鼻薬・点眼薬は母親の血中に移行する量が非常に少なく、乳汁中に移行する量も少ない 内服薬であっても、乳汁中への移行が少ないとの報告がある薬剤もある

Q3. 虫歯の治療で抗生剤を処方されました。

抗菌薬を使用する際は、乳児の観察を行いながら安全性の高い薬剤を選択していきます。通常使用されるペニシリン系やセフェム系は乳幼児の治療にも使用される薬剤であり、母乳から乳児に移行する量は治療で投与される量よりも少ないことから、安全に使用できると考えられます。

Check Point

抗菌薬を使用する際は、乳児の観察を行いながら安全性の高い薬剤を選択する ペニシリン系やセフェム系は乳幼児の治療にも使用される薬剤であり安全に使用できる

Q4. 緑内障の点眼薬は授乳中でも使用できますか?

緑内障治療では、プロスタグランジン関連薬やβ遮断薬の点眼薬が第一選択薬となっています。緑内障の治療で使用する多くの薬剤の添付文書には「授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが、投与する場合は授乳を避けること」と記載されています。しかし、点眼薬の乳汁中への移行量は少なく、乳児に有害作用が生じたという報告はありません。そのほかの点眼薬についても母親の血液中に移行する量は少なく、乳汁中、乳児の血液中への移行はさらに少ないため問題が生じることはないと考えられます。

Check Point

点眼薬は母親の血液に移行する量が少なく、乳汁中、乳児の血液中への移行はさらに少ないため、問題が生じることはないと考えられる
column

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  1. International Commission on Radiological Protection: Ann ICRP. 2000; 30(1): iii-viii, 1-43

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