special Interview

薬価制度の抜本改革がめざす方向性とは

2018年5月号
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「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立という、困難な命題のもとで進められた薬価制度の抜本改革が2017年末に取りまとめられました。厚生労働省で改革を進めた一人である目黒朗氏に改革の狙いを聞きました。

──今回の薬価制度改革は、「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」という2つの課題の実現に向け、新薬収載時の評価が拡充された一方、新薬創出等加算については対象品目が絞り込まれる内容となりました。制度改革の背景とめざす姿をあらためて教えてください。

2016年度末に内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣の4大臣合意による「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(以下、基本方針)が示されました。その背景にはオプジーボのような効能追加等により市場規模が大幅に拡大する場合を含めて、薬価制度について、いろいろとご批判やご指摘をいただき、抜本改革を進めることになりました。
基本方針には「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し、「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現することを目的として、2018年度に抜本改革を行うと記されています。その中で、一つは長期収載品に依存するモデルからより高い創薬力を持つ産業構造への転換、それから新薬創出等加算について、真に有効な医薬品を適切に見極めることなどが基本方針に盛り込まれ、これに沿って2018年度薬価制度の抜本改革が取りまとめられました。

──新薬創出等加算は対象範囲を絞り込むことになりました。

新薬創出等加算は企業要件を満たせば事実上全ての新薬が対象となり、革新性の低い医薬品の薬価も維持されることが課題として指摘されていました。一方で、特許期間中の新薬の薬価の引き下げを猶予することは重要な制度であるとも理解しています。
真に有効な医薬品を適切に見極めて評価することが今回の見直しで重要な点だったと考えています。もう一方で、新薬創出等加算はドラッグ・ラグの解消に大きく寄与してきたと思っています。製薬企業がさらなる革新的新薬の開発とドラッグ・ラグの解消に取り組むインセンティブを残す必要がありましたから、新しく企業指標を設けて段階的に評価する仕組みを設けました。このように、①革新的新薬を見極めるという品目要件の見直しと、②さらなる革新的新薬の開発やドラッグ・ラグ解消に取り組むよう企業指標による達成度・充足度に応じて加算にメリハリをつけるという企業要件・企業指標の見直し、その2つが大きな見直しの柱だったと考えています。
特に、市場実勢価格主義である日本の薬価制度の中で、薬価を維持していくべき品目はどのようなものであるべきかということは大変難しい課題でした。そのような中で、最終的には、オーファンドラッグや臨床的有用性があるとして薬価上の加算がついた医薬品などのほか、薬の新しいメカニズムにより、①既存治療で効果不十分な疾患に有効性を示した医薬品、②既存治療より優れた効果を示した医薬品、③その効能を有する他の医薬品が存在しないことなどを要件として、対象品目を選定することになりました。これらの品目要件は、臨床上の意義を重点に考えられたものであり、つまり、患者にとっていかに有用な医薬品であるかどうかが決め手になったものと考えています。

──長期収載品は10年を経過した品目の薬価が大幅に引き下げられた一方、基礎的医薬品の対象範囲が拡充されました。

日本は欧米に比べるとまだ長期収載品のシェアが高い傾向にありますが、長期収載品に依存するのではなく、次の新薬を開発していくのが製薬産業の構造として望ましいと考えています。そのような問題意識から長期収載品はかなり大胆な改革が行われました。具体的には、G1(後発品置換率80%以上)なら6年後、G2(後発品置換率80%未満)は10年間かけて後発品の価格へ段階的に引き下げていくという仕組みを導入しています。これについては、10年先までの方向性を示したものです。薬価制度に限らず、10…

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