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【特定薬剤管理指導加算】「イ(RMP)」「ロ(選定療養)」算定Q&A
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新型コロナウイルス一問一答 続編

2021年2月号

Q1. 後遺症は?

日本と海外の報告で共通して頻度が高いのは、倦怠感と呼吸困難感。このほか日本では、発症60日後時点の嗅覚障害・咳嗽・味覚障害、発症120日後時点の嗅覚障害・咳嗽・味覚異常・脱毛などが報告されている。脱毛の持続期間は平均76日。イタリアでは関節痛・胸痛、フランスでは記憶障害・睡眠障害・集中力低下・脱毛など。

Q2. 日本での変異株は?

2020年12月25日に英国からの帰国者の空港検疫の検査陽性者から(VOC-202012/01)、12月28日に南アフリカ共和国からの帰国者から(501Y.V2)、2021年1月6日にブラジルから到着した渡航者から(501Y.V3)それぞれ検出。

Q3. 変異株は何が違う?

変異株は抗原性が変化しているため、既感染者への再感染やワクチン効果が変化するリスクがある。また、従来株と比較して、VOC-202012/01や501Y.V2は感染性が増加している可能性が高い。感染力が高まると同時に毒性が弱まるのがウイルス変異株の通常と考えられているが、VOC-202012/01では、感染力が高まっているにも関わらず現状、弱毒性がみられない。

Q4. ワクチンの種類と機序は?

種類は、mRNA、ウイルスベクター、組換えタンパク、DNA、不活化(モデルナ社とファイザー社のワクチンがmRNA、アストラゼネカ社のワクチンがウイルスベクター)。
mRNA
mRNA(抗原となるタンパク質を作り出すための設計図の役割)を脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle, LNP)で包んでカプセル化し、筋肉注射で投与。
ウイルスベクター
アデノウイルスなど感染力のあるウイルスに、特定の遺伝子を組み込んで人体に投与。アストラゼネカ社のワクチンはチンパンジーアデノウイルスを用いたもの。

Q5. 日本のワクチンの供給数は?

合計3億1400万回分。内訳は、モデルナ社5000万回分、アストラゼネカ社1億2000万回分、ファイザー社1億4400万回分。

Q6. ワクチン接種回数は?

2回接種(ファイザー社ワクチンは21日後以降、モデルナ社とアストラゼネカ社のワクチンは28日以降)が必要。

Q7. ワクチン接種の順番は?

国立病院等の医療従事者(約1万人)→全国の医療従事者(約370万人)→高齢者(約3,600万人)→基礎疾患を有する人(約820万人)→高齢者施設従事者(約200万人)→それ以外の人。ワクチン接種は2021年2月下旬から予定。

Q8. ワクチンの有効率は?

ファイザー社とモデルナ社のワクチンの第Ⅲ相試験の中間報告では、有効率90%以上。インフルエンザワクチン(2015-2016年シーズン、65歳未満の成人)の有効率は52.9%のため、この成績は高いといえる。ただし、これは「90%の人には有効で、10%の人には効かない」あるいは「接種した人の90%は罹らないが、10%の人は罹る」という意味ではなく、「非接種群の発症率よりも接種群の発症率のほうが90%少なかった(発症リスクが1/10に減少)」という意味。

Q9. ワクチンの短期的な副反応は?

日本のワクチン供給3社の臨床試験では、局所反応として疼痛が約60~80%で発生(アストラゼネカ社のワクチンでは56歳以上の疼痛頻度は20~43%)。これは、インフルエンザワクチン接種時の頻度の10~22%に比べてはるかに高い。全身反応として、mRNAの2回目の接種後に38℃以上の発熱が10~17%みられている(アストラゼネカ社のワクチンでは0%)。その他、倦怠感と頭痛が高頻度で発現。ただし、これらの被験者の多くは白色人種。アジア系の割合が少ない。

Q10. ワクチンの長期的な安全性は?

過去のSARS、MERS、RSウイルス、麻疹のワクチン接種では、標的の病原体による疾患発症の場合に、非接種よりも症状が増悪するワクチン関連疾患増悪という現象が起こり得る。

Q11. 海外のワクチン接種状況は?

もっともワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、2回の接種が必要なファイザー社のワクチン接種を2020年12月20日に開始し、2021年1月末の段階で人口約900万人の3割以上に当たる約300万人が少なくとも1回目の接種を終え、このうち100万人以上が2回目も済ませている。

Q12. ウイルス変異に今のワクチンは有効?

現時点で発見されている変異株に対しては効かないというエビデンスはない。また、「GISAID(ギーセイド)」と呼ばれるビッグデータのシステムによって、世界各国の変異株の遺伝子情報が世界レベルで共有されている。これを活用することで、今後の新規変異株に対応した新しいワクチンが、早ければ数か月程度で開発できるとされる。さらに、アメリカでは、今後登場するであろう変異株を人口的に予測してデータベース化している動きもある。

参考資料
  1. 日本呼吸器学会HP「COVID-19 のいわゆる『後遺症』について」
  2. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第4.1版」
  3. 国立感染症研究所「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第5報)」
  4. NEWSPICKS「WEEKLY OCHIAI シーズン4 2021年1月27日」
  5. 日本感染症学会 ワクチン委員会 COVID-19 ワクチンに関する提言(第1版)
  6. 首相官邸HP「新型コロナワクチン接種に向けた国・自治体の準備状況」
  7. 毎日新聞ニュース 2021年1月30日

※本ページの情報は、2021年1月31日時点までのものです。最新情報は変更となっている可能性があります。

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