本記事は、公益財団法人 日本医療機能評価機構が薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業にて発行している「共有すべき事例」を参考に、事例の概要と関係する薬剤のポイントを中心にサクッと読めるようファーマスタイル編集部が作成、紹介しています。
「共有すべき事例」原本はこちらから
https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/contents/sharing_case/index.html
ゾコーバ錠と新ルルA
- ゾコーバ錠は、頭痛治療薬クリアミン配合錠(エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン)と併用禁忌である。
※併用により、エルゴタミンの血中濃度が上昇し、血管攣縮等の重篤な副作用のおそれ - 新ルルAは無水カフェインを含むが、ゾコーバ錠は無水カフェインとは併用禁忌ではない。
ゾコーバ錠125mgが処方された患者より、市販薬の新ルルAの服用を聴取。薬剤師は、新ルルAに含まれる無水カフェインがゾコーバ錠125mgと併用禁忌であると考え、処方医に疑義照会したところ、ゾコーバ錠125mgが削除になった。
- 本事例は、薬剤師がクリアミン配合錠の一般的名称を見て、無水カフェインを含有する一般用医薬品とゾコーバ錠が併用禁忌と誤認した事例。
クリアミン配合錠は、ゾコーバ錠との併用によりエルゴタミンの血中濃度が上昇し、血管攣縮等の重篤な副作用を起こすおそれがある。そのため、ゾコーバ錠はクリアミン配合錠と併用禁忌だが、無水カフェインとは併用禁忌ではない。 - 医療用医薬品の添付文書の併用禁忌には該当する薬剤が一般的名称で記載されることがあり、配合剤の場合は併用禁忌に該当しない成分も併記されるため、誤認しないよう注意する。インタビューフォームや医薬品リスク管理計画書(RMP)などを活用し、薬剤の特性や服薬に関する注意事項を理解しておく。
- 誤った情報提供により、患者が本来受けられるはずの必要な治療が受けられなくなることにつながることもある。
ゾコーバ錠の薬物相互作用検索ツール (塩野義製薬HP参照)
https://med.shionogi.co.jp/disease/infection/covid19/xocova/search-tool.html
メチコバール錠とリョウシンJV錠
- 医療用医薬品メチコバール錠と一般用医薬品リョウシンJV錠は、ともに有効成分としてビタミンB12を含む。
80歳代の女性患者に、整形外科からメチコバール錠500μg(1回1錠、1日2回朝夕食後)などが処方された。
一般用医薬品などの服用を確認したところ、関節痛緩和のためリョウシンJV錠を服用していることが判明。
リョウシンJV錠に含まれるシアノコバラミンは、メチコバール錠のメコバラミンと同じビタミンB12であるため、処方医に疑義照会を実施。その結果、メチコバール錠は削除、リョウシンJV錠を継続することになった。
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メチコバール錠:[有効成分]メコバラミン(ビタミンB12)、1錠あたり250μg/500μg規格あり
リョウシンJV錠:[有効成分]シアノコバラミン(ビタミンB12)、3錠(1日最大服用量)中に1,500μgほか - 水溶性ビタミンの過量服用により重篤な副作用が発現する可能性は低いが、処方薬と同類のビタミンを含有する薬剤を患者が服用していることは、医師が治療薬を選択するうえで有用な情報になり得る。