
国は2025年に向けて、高齢になっても疾患を抱えていても可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域包括ケアシステムの構築を推進している。2025年はゴールではなく、未知の時代・社会への通過地点にすぎない。2018年に行われる診療報酬・介護報酬の同時改定で日本の医療・介護は大きく変わろうとしている。2017年11月14日、日本アルトマーク主催のシンポジウムが東京都内で開催され、公益法人社団全日本病院協会会長の猪口雄二氏と公益財団法人脳血管研究所附属美原記念病院院長の美原盤氏が、地域医療のあり方について指針を示した。
「大変革期における地域医療の姿」2018年度医療・介護同時改定を考える
18年の同時改定は大きな舵切りの最後の機会
第7次医療計画、第7次介護保険事業計画が2018年度にスタートします。それとともに、診療報酬・介護報酬の同時改定も予定されており、高齢化に耐えうる地域医療提供体制を構築するうえで重要な局面を迎えています。
2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定を控え、2,500以上の病院が加盟し、その90%以上を中小民間病院が占める全日本病院協会は生き残りをかけて経営戦略を真剣に考えなくてはなりません。
第7次医療計画では、2018年度から医療計画と介護保険事業(支援)計画が同時に見直されます。また、全国で市町村を中心に地域包括ケアシステムが構築されます。地域医療構想や介護保険事業(支援)計画との整合性を図るために都道府県と市町村の協議の場が設置されています。地域医療構想調整会議は超高齢社会の医療・介護の道筋をつけるための重要な機会になりますが、実際に病床機能を変更するように稼働している地域はまだないのが現状です。
現状のままだと、全国の医療機関の病床数は2013年の時点で134.7万床だったのが、2025年には152万床に膨らむと推計されています。国は病棟の機能分化や連携などで115万~119万床を目指すとしています。また、2025年に向けて在宅医療等に、新たに30万人程度のサービスが必要になると考えられており、療養病床の転換などによる在宅医療、介護施設の整備などの対応が見込まれています。
長期療養の要介護者に医療と介護を一体的に提供する目的で新たな介護保険施設として「介護療養院」が創設されます。介護療養院は介護保険法上の介護保険施設ですが、医療法上は医療提供施設として位置づけられ、現行の介護療養病床の経過措置が6年間認められます。
2018年度の診療報酬・介護報酬は6年に一度の同時改定で、大きな節目になります。さらにその次の診療報酬・介護報酬の同時改定は2024年に行われますが、今回の同時改定は2025年までに大きく舵を切ることができる実質的に最後の機会であり、「重要な分水嶺」になるといわれています。
日本の医療に求められる高生産性・高付加価値構造への転換
診療報酬や医療制度の改定と同等に社会に大きな影響を及ぼす問題として、私は政府の「働き方改革実行計画」に注目しています。「働き方改革」は、労働時間の上限を設定し、違反すると罰則を科す方向で検討されていますが、日本医師会と四病院団体協議会はこれに対して、医師法に規定される応召義務を踏まえ、「医師の働き方は例外」を求める要望書を提出しました。これを受けて「働き方改革実現会議」(議長:安倍晋三内閣総理大臣)は、「改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用する」などとしました。
今後、日本の医療の高生産性・高付加価値構造への転換が必要になるといわれており、患者の多様なニーズに応えられる環境をつくることが重要です。全日本病院協会では2018年度から病院総合医の養成事業をスタートさせる予定です。