
知らぬ間に心身に負担がかかる「潜在的睡眠不足」
1日の睡眠時間については、個人差が大きいことが知られています。日本の成人2万8,000人の睡眠時間を調べた研究では、7時間前後をピークに幅広い分布を示しています1)。また、世界各国のデータをまとめた研究によると、25歳では約7時間、45歳では約6.5時間、65歳では約6時間というように、25歳からは20年ごとに30分程度の割合で睡眠時間は減少することが明らかになっています2)。さらに、季節によっても睡眠時間が変動することから3)、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」では、年齢や季節に応じて、昼間に眠気で困らない程度の睡眠を、と呼びかけています。
しかし、昼間に眠気で困っていなければ大丈夫かというと、実はそうでもないようです。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所のグループが、次のような実験を行いました4)。対象は、昼間の眠気を感じていない20歳代の男性15人。自宅での1日の平均睡眠時間(習慣的睡眠時間)は7時間22分で、これは国内外の20歳代男性の標準的な睡眠時間です。彼らに、防音・遮光された寝室で1日あたり12時間を目安に、9日間にわたって眠ってもらいました。途中で目が覚めても寝室から出られないので、二度寝、三度寝をすることになり、当人にとって必要な睡眠時間が絞り出されます。
そうすると、初日の睡眠時間は平均10時間33分で、自宅での睡眠時間より3時間以上も長いという結果でした。その後、徐々に減りましたが、自宅での睡眠時間を上回る水準で定常化し、必要な睡眠時間は平…