薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 業界  〉 special Interview  〉 「患者さん」を主語にして考える
special Interview

「患者さん」を主語にして考える

2018年1月号
「患者さん」を主語にして考える 自宅で過ごすために最適な医療をチームで提供の画像
日本の65歳以上の高齢者人口は2012年に3,000万人を超えて以来、増加を続け、2017年には3,514万人となり(9月時点推計)、総人口の27.7%を占めています。高齢化に伴う在宅医療の進展とともに、在宅患者さんを支えるための薬剤師の役割も広がっています。株式会社フロンティアファーマシーの前田桂吾氏は、在宅医療専門薬局でがん患者さんを中心とした在宅医療に携わっています。前田氏の在宅医療に寄せる思いや薬剤師が在宅医療に携わるうえで注意したい点などについてお話ししていただきました。

「家に帰りたい患者さんは帰してあげたい」との思いから在宅医療へ

私は、今の職場に勤める前の12年間、病院に勤務していました。緩和ケア病棟、一般病棟ともに経験しましたが、緩和ケア病棟の患者さんの表情は穏やかで、「緩和ケアはすごい。これからは緩和ケアが必要だ」と常日頃考えていました。一方で、一般病棟の患者さんががん末期になり「家に帰りたい」と言っても、その患者さんの地域に医療用麻薬の注射剤を確実に供給できる薬局がなく、薬局を探している間に、患者さんの具合が悪くなって帰してあげられなくなった経験もありました。「家に帰りたい患者さんは帰してあげたい。在宅での緩和ケアを支えられる薬局が必要だ」と思い続けていた中で、私の想いに適う今の職場と出会い、思い切って転職して在宅医療に関わり始めました。

医療者は患者さんとご家族の生活を支える黒子

現在の職場は在宅医療に特化した保険薬局です。患者さんの多くは医療依存度の高い方で、がん患者さんが多いのが特徴です。当薬局は首都圏に9店舗あり、東京都台東区にある浅草橋店は東京23区内の東半分、車で片道1時間程度の範囲内の患者さんを、数名の薬剤師で訪問しています。
当薬局では入院先の病院や在宅療養支援診療所の医師からの依頼が多く、依頼元の医師のほか訪問看護師やケアマネジャーなどと連携しながら訪問業務を行っています。
在宅医療の主役は患者さんで、医療者は患者さんとご家族の生活を支える黒子です。患者さんは気兼ねなく、自分らしく生活するために自宅に帰られたのですから、患者さんの価値観に反していたり、生活の流れを乱す医療を受けるのでは、自宅に帰ってきた意味がありません。そのため、在宅医療では医療的なファーストラインが必ず…

この記事の関連キーワード

この記事の冊子

特集

女性ホルモンとがんの知られざる関係

日本人の死因第1位はがんです。がんの発症原因についてはまだ分からないことが多く、女性に多いがん、あるいは少ないがんなどの性差が生まれる背景として、女性ホルモンが関与していると考えられています。

女性ホルモンとがんの関係の画像
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

がん緩和ケアPart.1 「がん緩和ケア」で必要な患者の心を開くコミュニケーションとは?

がん患者のADL、QOLがここまでよくなった背景にはチーム医療による緩和ケアの充実がある。がんと診断された時から始まる緩和ケアにおいて患者の心を開くコミュニケーションとは?

がん緩和ケアPart.1 「がん緩和ケア」で必要な患者の心を開くコミュニケーションとは?の画像
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

がん緩和ケアPart.2 「がん緩和ケア」において薬剤師に期待される服薬指導とは?

緩和ケアでは患者の声に耳を傾け、不安な気持ちを和らげたり、医療者同士の意思疎通を図ることも重要な役目です。薬剤師に期待される服薬指導のポイントとは?

がん緩和ケアPart.2 「がん緩和ケア」において薬剤師に期待される服薬指導とは?の画像
special Interview

「患者さん」を主語にして考える

高齢化に伴う在宅医療の進展とともに、在宅患者さんを支えるための薬剤師の役割も広がっています。株式会社フロンティアファーマシーの前田桂吾氏に薬剤師が在宅医療に携わるうえで注意したい点についてお話ししていただきました。

「患者さん」を主語にして考えるの画像
ここに注目!知っているようで知らない疾患のガイセツ

知っているようで知らない 疾患のガイセツ 高血圧緊急症

高血圧は、「サイレントキラー」といわれるように、多くの場合、自覚症状がないまま進行して動脈硬化性疾患を発症し、死に至ることもある疾患です。今回は、労働者健康安全機構横浜労災病院院長の梅村敏氏に、高血圧緊急症について解説していただきました。

知っているようで知らない 疾患のガイセツ 高血圧緊急症の画像
はじめる在宅 現場で役立つ基礎知識

はじめる在宅 在宅訪問の準備

薬剤師の在宅訪問は、国が進める地域包括ケアシステムにおいても、在宅患者を支える重要な役割として期待されています。在宅訪問において必要な基本的知識を解説していきます。

はじめる在宅 在宅訪問の準備の画像
special column

DVO導入のメリットと課題

抗がん剤の注射薬について、単回使用のバイアルを複数回使用する「薬剤バイアル最適化(Drug Vial Optimization :DVO)」の導入に取り組む病院が増えています。

DVO導入のメリットと課題の画像
Medical Diagram

プレゼンテーションの目的とは?

学会発表、多職種カンファレンス、患者教育など、医療者はさまざまな場でプレゼンテーション能力が求められます。プレゼンテーションは、ただ単に資料を説明することではありません。プレゼンテーションの目的とは?

プレゼンテーションの目的とは?の画像
学会クローズアップ

薬剤師の職能と新たな役割とは?

今後、かかりつけ薬剤師が地域住民への健康サポート機能を発揮するために必要とされる能力や取組みとは?超高齢社会における薬剤師の役割についてさまざまな意見が交わされた第50回日本薬剤師会学術大会の模様をお届けします。

薬剤師の職能と新たな役割とは?の画像

この記事の関連記事

人気記事ランキング