特集

臨床検査値を活かす

2019年9月号
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薬剤師は医薬品を扱う専門家として、薬学的管理を介して薬物療法の有効性と安全性の確保に貢献することが求められています。しかし、保険薬局の薬剤師は、患者さんのカルテ情報がない中で、限られた情報を基に処方鑑査の業務を行っています。そこで、患者情報の共有化のひとつとして、処方箋への臨床検査値の表示が大学病院を中心に開始されています。今回は、これをいち早く開始された、千葉大学医学部附属病院薬剤部長の石井伊都子氏に、臨床検査値について解説していただきました。

■ 検査値記載の処方箋サンプル

臨床検査値を活かす 検査値記載の処方箋サンプルの画像1
臨床検査値を活かす 検査値記載の処方箋サンプルの画像2
石井伊都子氏ご提供

処方箋に表示された検査値を医師とは異なる薬学的な視点で評価する

臨床検査値は、薬剤師が安全性確保のための処方鑑査を行う上では有用な情報なのですが、これまでカルテにアクセスできない保険薬局の薬剤師は、その情報を持たずに処方鑑査を行ってきました。しかし、近年、薬剤師による処方鑑査の精度を上げ、「副作用の回避」、「過量投与の回避」、「禁忌症例への投与回避」という薬物療法の安全性の確保を向上させるために、大学病院や基幹病院などで、院外処方箋への臨床検査値の表示が徐々に行われるようになってきました。
原疾患の治療を行う医師としては、薬物療法開始後はどうしても安全性より有効性に注目しがちになります。
また、限られた診療時間では、患者さんに副作用の具体的な聴き取りまでは十分に行うことができないのが実状です。患者さんの方も、原疾患とは別の部位などの些細な変化までは医師に伝えない、といったケースが多く見受けられます。
結果として、医師と患者さんの両者でそれぞれ処方薬剤の安全面のチェックが漏れ、副作用が重篤化することも少なくありません。
医師と患者さんのチェック漏れを薬剤師がフォローすることは、薬物療法を安全に行う上で非常に重要です。医師とは異なる薬学的な視点で客観的に検査値の評価を行い、患者さんの状態と結び付けて考察することで、高度化した現在の薬物療法において、有効性、安全性を確保することができるのです。

医薬品ごとの注意すべき項目をデータベース化 注意すべきポイントがすぐにつかめる表示に

臨床検査値の処方箋への表示項目は各施設で異なりますが、千葉大学医学部附属病院では、前頁の処方箋サンプルのように、「検査値情報」(上部)と「特に注意が必要な薬剤と検査値情報の組合せ(医薬品別検査値)」(下部)の項目を表示しています。「検査値情報」は、全処方箋に表示された共通の検査値で、『重篤副作用疾患別対応マニュアル』(厚生労働省)を参考に、自覚症状があったとしても早期発見が難しい副作用、および自覚症状よりも先に臨床検査値が変動する副作用に対して、早期発見、早期対応するための臨床検査値の項目を参考に表示しています。
医薬品別検査値」は、当院で構築したデータベースを基にして作成しています。該当する医薬品としては、添付文書の禁忌・警告に具体的に検査項目が記載されている医薬品と、添付文書または『薬剤性腎障害診療ガイドライン 2016』(日腎会誌2016;58(4):477-555)の付表2(腎機能低下時の主な薬剤投与量一覧)に、腎機能の状況に応じた至適投与量の記載のある医薬品があります。
この「医薬品別検査値」の記載によって、処方時に添付文書を都度確認しなくとも、医薬品ごとに注意すべき検査値が一目で分かるように なっています。
当初このデータベースは当院の採用薬のみの情報で作成しましたが、その後ほどなく、他の施設でも使用可能なように、日本で製造販売されている医薬品全ての情報を網羅した汎用性のあるデータベースとして更新しました。実際に現在複数の施設でこのデータベースが病院のシステムに組み込まれて活用されています。

検査値を基にした処方鑑査 検査値の異常と副作用の症状を結び付けて評価を

臨床検査値情報に基づく処方鑑査では、単に検査値が基準の範囲内か範囲外か、という点だけでなく、CTCAE v5.0のグレード評価を参考に検査値の異常がどの程度の重篤度か、さらに異常の場合は処方された薬剤の影響によるものか、検査値が症状と結び付くのか、などを総合的に評価していきます。
そこでポイントとなるのが患者さんへの聴き取りです。検査値から起こり得る症状を推定した上で、患者さんに詳細な聴き取りを行うことが非常に重要です。
そして、検査値の異常とその程度、患者さんの症状から疑われる副作用を推定した上で病院へ疑義照会を行います。
当院では保険薬局からの疑義照会は薬剤部のドラッグインフォメーション(DI)担当が受け、医師に確認が必要な場合はDI担当者から確認を行い、原則的には4分以内に保険薬局へ返答することを心がけています。迅速な対応を行うためには、照会を受けた医師がすぐに判断できるように、具体的に疑義がどこにあるのかを明確にし、薬剤師による客観的な評価をロジカルにまとめて伝えることが非常に重要となります。
実際のケースで処方鑑査、疑義照会、服薬指導までのポイントをご紹介します。

Case1

60歳代 男性

処方内容

Rp1) アボルブカプセル0.5mg・・・1C
分1 朝(食後30分) 84日分
Rp2) ユリーフ錠4mg・・・2T
分2 朝夕(食後30分) 84日分

検査値情報(固定検査値より抜粋)

eGFR 33.2
CRE 1.66H
シスタチンC ***

特に注意が必要な薬剤と検査値情報の組み合わせ

ユリーフ錠4mg 腎機能[eGFR、CRE、シスタチンC]

処方鑑査

クレアチニン

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