Special Report

骨粗鬆症患者のための電子薬歴システムの活用とは?

2018年11月号
骨粗鬆症患者の服薬継続のため独自の指導箋と電子薬歴システムを活用伊東薬局 日ノ出町店の画像
急速に高齢化が進む日本では骨粗鬆症の患者も年々増加しており、 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」によると、その数 は1,280万人と推測されている。骨粗鬆症治療の中心は薬物療法 だが、患者は痛みなどの自覚症状がないことも多く、1年で約半分 は脱落するとされ、治療の継続が課題になっている。今回は、骨粗 鬆症治療薬の服薬に関する脱落率が1年間で約1割という伊東薬局日ノ出町店の伊東大輝氏に、その取り組みを聞いた。

骨粗鬆症の病態と治療

骨粗鬆症は骨強度が低下して、骨折リスクが増大しや すくなる骨疾患と定義される。骨折しやすいのは椎体、 大腿骨近位部、手首の橈骨、上腕骨など。椎体骨折は背骨 が体の重みで押し潰されてしまうもので、背中や腰が曲 がったり、身長が低くなったりして気づくことが多い。 大腿骨近位部は骨折すると歩行が困難になり、寝たきり になって要介護となるリスクが高くなる。
骨粗鬆症の治療薬にはビスホスホネート製剤、SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)、抗RANKL モノクローナル抗体、副甲状腺ホルモン製剤、活性型ビタ ミンD3 製剤などがあり、患者個々の状態や重症度に応じて処方される。

伊東薬局日ノ出町店の取り組み

大分県にある伊東薬局日ノ出町店は近隣にリハビリ テーション専門病院があり、応需している処方箋の約 9 割 が 整形外科、残りの1割が内科、循環器科などである。 薬剤師4人で、月に1,200~1,400枚の処方箋を扱っており、そのうち約300枚が骨粗鬆症患者だという。同薬局薬剤師の伊東大輝氏によれば、同薬局の骨粗鬆症患者の 95%は女性だ。「患者さんの年齢層は75歳以上が77%、 70~74歳が7%、70歳未満が16%という分布です。痛みがきっかけで整形外科を受診した結果、骨密度の低下が判明して治療を開始するケースが最も多いようです。症状はないが検診で引っかかって治療を始める人もいます。 関節リウマチの治療が長引いて骨粗鬆症の薬剤が追加になることもあります」。
処方薬のメインはビスホスホネート製剤で、月1回服薬製剤、4週に1回服薬製剤、週1回服薬製剤が中心だ。 SERMや活性型ビタミンD3 製剤もよく処方される。高齢になるにつれてビスホスホネート製剤が増え、比較的若 い患者さんは毎日服薬する活性型ビタミンD3 製剤や、 SERMが多いという。「骨粗鬆症の薬剤はアドヒアランスが悪いといわれています。骨粗鬆症は症状がないことが 多く、最初は痛みで受診しても痛みがなくなると病院に行く理由もなくなり、来院しなくなる。特に若い患者さん にそうした傾向が強いと感じています。高齢になってく ると病院に行く手段がない人や、認知症も増えてくる。 認知症で独居の人に経口ビスホスホネート製剤が服薬できるかという懸念もあります」。

疾患理解を通して服薬の動機づけを図る

同薬局では、患者のアドヒアランスを高めて脱落を防ぐために、病識と薬剤に対する理解を深めることを意識した指導を実施している。具体的な取り組みとして、伊東氏は最初に骨粗鬆症治療薬が処方された患者に対しては、わかりやすいよう独自に作成した指導箋や同薬局で導入している電子薬歴システムの服薬指導の支援機能を用いて、疾患について説明することが多いという。これによって、服薬の動機づけをしてもらう。「骨はどのように作られるか、女性ならば女性ホルモンと骨の関係を説明して、加齢とともにどんどん骨がもろくなることを理解してもらいます。患者さんは、転倒して骨折すると考えがちですが、転ばなくても自分の体重で骨折してしまうこともあると伝えます。特に若い患者さんは、疾患についてしっかり理解すると治療の必要性を自覚し、服薬継続につながります」と伊東氏は指摘する。

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